旅日記「原宿ゴダール」


原宿ゴダールとは…

原宿でもない、ゴダールでもない、でも、テーマを聞かれたら、「原宿ゴダール」としか言い様のないロードムービーを作ろうと、去年のクリスマス、お昼休みにコンビニで「おやすみなさい」を読みながら思いついたのでした。それでサライに相談してカメラ貸してもらって、渋谷、松本をまわって旅に出たのでした、まあ、例の出来事の時から、年末にレコード馬鹿買い旅行はするつもりだったのですが、まあ、いろいろあって、ぶっ壊れた旅日記になってしまったのです。あんまり恥ずかしいので書き直すつもりだったけど、いけませんね、読み返すと面白いんですよ。


12/28


 ワインを一本空けての朝なので頭が痛い、しかしだ、今日は旅に出る日だ、旅行くぞ!何かあるかも?人との出会いが旅だから、借金してでも行くぞ、旅!トラベル・イン・マインド!そう、おまたせしました、これが噂の「原宿ゴダール」だ!

8時の電車で瀬戸駅に立つ、霧に包まれたホーム、まさに冬の朝という風情が、俺の旅ゴコロをさらに演出する、憎い霧だぜ畜生!

 新幹線のチケットを持ち、カメラを片手に乗り込む、車内は思ったよりすいている、爆音で和田アキ子を聞き、旅モードに突入かあ?と思う間もなく今回の旅史上最大の事件がいきなり攻撃開始だ、ヤベー!

 姫路から乗って来た女の子が隣に座り、話かけてみる、なんと遠距離恋愛!なんと女子高生!相手は大学生!これから東京まで行くらしい、冬休みの宿題かかえて行くんだって、東京へ、凄い、こんな凄い女子校生はいない!しかも可愛い!名前は?「西島直子」「直子!いーじゃないですか」という間抜けな会話が続く、なぜか知らないけど、この子と波長が合ってしまって、合いまくってしまってヤバい、ヤベーよ!

 しだいに直子の(もう呼び捨てかよ )の様子に変化が、なんかブルーになっている、「こんなんうまく行くわけない、続かへんの分かってるもん」とか、どうやら自分に自信が無いみたい、俺と同じ様に。「あたし、こんなぶさいくやのに、太ってるし」とかブツブツ言って、君みたいに可愛い女の子はいないのに!とか言ってあげればよかった、あの時、言えばよかったんだ、だけど、言ってしまっても俺にはどうする事も出来ない、俺は旅の途中だし、あんまり仲良くなっても分かれるのが辛いだけだ、けど、そんな事では何も発展しないよ、短くとも美しく燃える、それが恋というものじゃないかぁ?

 子供の頃、お正月に親戚の家に2〜3日滞在し、子供同志で仲良くなって、一緒に遊んで、ご飯食べて、お風呂とかも入って、凄え楽しくて、本当に楽しくて、でも別れの時が来て、また来年とか言っても辛くて、でも一生懸命手をふって、車が見えなくなるまで手をふって。でもぼくらは大人になって、そんな記憶すら忘れてしまっている。この直子さんと仲良くなって、東京駅までの短い時間、ぼくは子供に戻っていた様な錯覚をおこした。ふざけあって、笑いあって、けど何も残さない、無垢な関係。17歳の精一杯の君は可愛いと28歳の僕が思う、心からそう思うんだよ、馬鹿な奴、どうしようもないね。

 富士山が見えたとたん君ははしゃいで「カメラ、カメラ」と騒いで、ぼくは慌ててカメラを出して、でも画面がブレて、可笑しかったなあ。こんな風に笑う事なんてここしばらくなかったからさあ。でも、ほんとに可笑しかった。

 別れというものはあっけなくやって来る、明日死ぬ人は、自分が明日死ぬとは思ってない場合が多い、俺も死ぬときはあっけなく行きたいね、畜生、こんな馬鹿な!とか言いながら悔しがってね。人生は短い映画みたいだ、と小西さんは言った、人は生まれて、恋をして、そして死んでいく、あっけないもんだ、けど、悪くない。俺の映画は短くて、退屈で、ちよっと異常で可笑しかったりする特殊な映画だ、カルトか?俺の人生はつまんないカルトムービーという事なんだろうか。どーでもいいよね、そんな事は。

 東京駅だ、ぼくの予定的にはお昼でも一緒に食べて別れたかった、そんくらいの欲望だれしもあるでしょう?あるはずなんだよ!でも神様はそんな願いすらかなえてくれなかった、そりゃそうさ、神様なんていないんだから。

 直子の様子が変だ、かなり変だ、にやけている、「なに、にやけてるの?」とぼくが聞くと、「この人」と言って長身の男性の腕をつかんだ、腕をつかんだんだ!それで顔はひまわりみたいに輝いている、美しいと誰もが思うくらいに、恋する女性は美しいって本当だね。まいったね、やられたよ。


えーっと、偶然乗り合わせた女子高生に恋をしてしまった訳ですね、いろんな話したなあ、クリスマスプレゼント送ったら、直子さんの親が勝手にカレシ用にみかんとか米とか詰め込んで送ったとか、あと親が容認しているっていうのも凄い、ふだんはバトミントンやってるとか、カレシに貰ったペンダントをつけてるとか、とにかく面白くて可愛い女の子でした、旅に出ると誰でも恋をして切なくなるね、でもまた旅に出てしまう、それが男というものなんです。


 しばらく東京駅を撮影して旅感を出す、ハンバーグピラフ(スープ付き)を食べる、しかしま、これで今回の旅のメーンイベントは終わったし、撮影も面白いものが撮れた、よかったじゃん、なっ、俺。とか自分に言いきかせて、なんか想起するものが、俺って、まるで、寅さんじゃないか!

 そんな自分にあきれつつ渋谷へ、人多い、多すぎ、しばらく撮影するがいいもん撮れない、さっきの出来事が強烈だったのでしかたないな。タワーレコードでスーパーファリーの「サムシングフォーウィークエンド」を買う、買った瞬間にベルが鳴って、近藤さんから連絡がある。

 タワーの下で待ってると近藤さんが現われる、近藤さんは小柄で素敵な女性だった、すごく大きな声で笑う、いい事だとぼくは思う。近藤さんと薄暗い喫茶店(オルガンバーの下にあるアメリカンなお店、ジントニック800円)に入って世間話をする、カスタムメイドのカレンダーとテープをもらう、なんていい人なんでしょう、カレンダーはあまりに素敵なのでカラーコピーしてみなさんにプレゼントしたくなる。

 近藤さんとゼストとマキシマムジョイに行く、マキシマムジョイにははじめて行くけど凄くいい店だった、その後はなぜかプリクラ撮って、ガード下で近藤さんの撮影をして、フラフラ歩く、並んで夜道を原宿までダラダラ歩く、おお、原宿じゃないか、タイトルと一致するぞ「原宿ゴダール」って。

 新宿まで移動して、カレー屋さんで、凄いカレーを食べる、ご飯の上にドライカレーのルーの塊がドンってのっかってる、これが本物のドライカレーらしいけど、これがまたうまかった。近藤さんはデザートに紅茶プリン、うまそう。カレー屋で馬鹿話(アデルの恋の物語とパステルズ)を猛烈に語り倒してしまい、近藤さんには申しわけないと後々思う。


「ぼくの恋は自爆じゃなくて、相手も巻き込んじゃうから、一人で死んでりゃいいのに」とか言ったら、近藤さんの「でも失恋てそうですよ、相手も傷つけちゃいますよ」の台詞がよかった、近藤さんも一年ほど前につらい恋をしていたらしい、深くは聞かぬ。けどイマカレがいい人みたいでよかったね、「ラブラブなんです」とか書いてたしな。


 近藤さんはミネカワタカコとジムオルークが好きな、ちっちゃくて、行動的で、可愛い女の子でした、愛する人のためならなんだってしちゃいそうな感じです、写真もとります、カレシとバンドもやってます、ふだんは某音楽雑誌の仕事をしてます、とにかく、一生懸命生きてて、一生懸命人を愛そうとしてる人でしょう、それはぼくが目標としてるとこでもあって、でもたどり着けない地点でもあって、近藤さんみたいな人を自然に愛してしまう才能が羨ましい。渋谷から原宿までブラブラ歩いたなあ、夜道を、いいなあ。


 最後に新宿駅で東京を去る俺を撮影してもらい、そして別れる、これは自然な別れだ。

この時近藤さんは「ガスターデルソル」のアナログをかかえてた。

 9時のあずさで松本へ向かう、隣の席の女の香水だか化粧だかのにおいがきつくて「どうにもやれんよ」と思い、席を移動する。向かいの席の老夫婦が、ビニール袋をとりだす、その中にはホウレンソウとベーコンを無造作に切ったものが混ざっていて、見るからに変、ところがその夫婦、おもむろにそれを食べはじめる、怖い、あまりの恐怖に撮影出来なかった。嘘、べつに撮ってもいいけど面倒だったからです。「親指Pの修行時代」を読んでいたら松本に着いた、12時だった。


12/29


 トシくんと合流、今年は暖冬なので、松本も以外と寒くなかった、トシくんの部屋へ行き、なんか「白い旅」とまったく同じやなあ、とか言って笑う。「白い旅」というのは、大学の時ぼくが作った作品で、内容はぼくが松本へビデオかかえてやって来るというもので、やってる事やっぱり同じ。

 ここで、トシくんの7インチコレクションを撮影し、その後はダラダラ話して朝になる、さすがに疲れていて眠くてたまらなかったが、ほんとに眠らなきゃいけない4時ごろになると、ハイになって眠気が飛んでいる、そんなもんさ、いつも。

 11時に目が覚める、トシくんは爆睡中なので、鈴木博文さんの「ぼくは走って灰になる」を読む、日記が素晴しい、この人の日記にはプライベートと文学的比喩と全くの虚構が入り交じっていて、かっこいい!ただ自虐的、破滅的な感は否めないのだけど、それをひいてもまだかっこよさが勝つ!それにくらべると俺の日記はなんだ?赤面だ!こんなおっちゃんに俺もなりたいよ。

朝はラーメンを食べた、トシくんの食生活は限り無くスリリングだ。

 お昼、コインシャワーへ行く、川沿いの二階でシャワーをして、旅感爆発。

 午後からトシくんと街を流す、はじめにプロペラへ行くが閉まっている。店長は調子悪くて寝ているらしい、大丈夫かな?次に噂のWAVEの女の子のとこへ行く、おっ、美人だ、とか思って撮影しようとすると「撮影はやめて下さい」と店長らしき人に怒られる。しゅんとする。


で、旅してる訳です、それに胸の中はまだパトスとリビドーの塊が、マグマが渦巻いている訳です、そりゃーね、可愛い女性をみたら好きになるのは当たり前じゃないですか!思春期突入、思春期というか、発情期といか、とにかく、ぼくはまさに悪い虫というやつですよ、でも別に何もしないので無害な虫ですけどね。そんな自分探しの旅、見つけた自分の正体は「悪い虫」


 雑貨屋とか本屋をまわって、またプロペラへ行くがまだ閉まっている。トシくんは店長へ電話を入れるがいない、…大丈夫か?今日は29日という事で、みんなで肉を食うという話だったのだが、肉が遠くなっていく。  一回トシくんのとこへ帰り、しばらくぼやーっとしている、とりあえずプロペラが開いたという電話が入ったので、夜、プロペラへ向かう。

 さてやっとのプロペラだ、店長さんに名刺渡して初対面だ。せっかくなのでちょっと宣伝してしまおう、はっきり言って、松本にこれだけの店を出す努力には頭が下がりました、この充実度は素晴しいです。メジャーなものがほとんど無いという欠点もあるけど、でも入れません!という店長の老舗の親父にも通じるポップ魂に感動。店の維持の為にバイトを探しているという、なんて奴なんだ!京都の「アートロックNO.1」、渋谷の「マキシマムジョイ」、心斎橋の「シフトレコード」、そして松本の「プロペラ」というくらい素晴しいぜ。

 で、一目惚れ状態でジョニーハリスのアナログを買った、旅費が足りないのでトシくんが金かしてくれたし、もう、ここでは素晴しい事が次々起こる。

 そして先ほどのWAVEの女の子も登場、うわ、美人、フミエさんと云うそうです、こんな美人と友達なんて、トシくん、やるなオヌシ。嫉妬しまくるぜ全く。その後には、今日が誕生日というモモコさんという女の子も登場、美しい、この4人の友情は美しい、汚れた俺の心と対象的に、あまりのまぶしさに目がどーにかなるくらい輝いている。

 店を閉めて、みんなで焼肉へ、今日はモモコさんの誕生日という事で、焼肉パーティだって、楽しい、楽しすぎる、あんまり楽しくて酒ばっかり飲んで、夢の中にいるみたいだ、夢だ、これ夢だ。

 デニーズで雑談する4人を撮影する俺、もう酔ってて、楽しくて、俺、ずっと女の子ばっかり撮ってた、だめだ、だって…。それに俺はしょせん旅人で寅さんだもんな、とか言ってたら「寅さん気取りかよ!」と店長に突っ込まれて反省。こんな楽しい夜は多分もうないでしょう、俺の人生の中では。俺はこの4人の人間関係を壊したくない、絶対に、でも、俺がもしここに滞在して、頻繁に会う様になったら壊してしまうだろう、欲望を制御できないんだ、俺は馬鹿なんだ。

 みんなと別れてトシくんとこで寝転がる、「ああ、ダメでよかった」だの、「人間ってアホや」とかブツブツ言ってトシくんを混乱させる。でもその後、さっき撮影したビデオをトシくんに見せると納得する。「このハイエナ!」とか言われる、そうさ、俺はハイエナだよ、自分でも情けないけど、どうしようもない。

 ぼくがこの夜交した会話とか、押さえ切れない感情はいつかどこかへ消えるのだろう、消えるというのは語弊がある、何かに変わってそれはそれで存在し続けるような、そんな希望をいだいて、ぼくはやっぱり、ぼくなんだなと思って、大好きな女の子たちを思い出し、ぼくは消えてしまいたくなる、誰にも迷惑のかからない場所へ行って、その生涯を閉じてしまいたい、それが一番いい方法なんだろう。でも、そんな人生いやだ、好きなんだもの、どうしようもないよ、壊れてもしかたないよ、みんなごめんなさい、これがぼくなんです、赤心のぼく、裸のぼく、嘘も見栄もなんにもない、これがぼく。無視してくれてもいいし、ぼくはぼくでこれからも恋をして泣いて自殺とか考えて、でも生きてて、そしていつか本当に死んでしまうんだろうな、それもいいさ、悪くない、ぼくの人生だものね、ありがとう、美しい思い出、またいつか。


 

12/30


 トシくんに先駆けてまた目を覚ます、今日は旅の終わりだ。寝起きのトシくんと歯切れの悪い会話をしつつ駅まで、駅でせっかくホームまで見送ってくれたトシくん、けど、電車が遅れて時間がなくなり、あわててバイトへ行って、こんな俺の為にそこまでして申し訳無いです。全く。

 電車の中は混んでで、外は雪なんか降ってて、旅の終わりを締めてくれるみたいでした。人間って単純だけど、だからこそややこしくなっちゃうんだよね、馬鹿だ、人間って馬鹿で可愛い。人が人を好きになるって、俺、素晴しいと思う。ちょっと泣くよ。

 名古屋からの新幹線も満員で、辛かった、やっとの事で家に戻って、酒のんで、その日は寝た。


12/31


 「マドモアゼルGOGO」を借りて見る、旅のビデオを見返してニヤニヤしたり、冷汗かいたり、泣いたりして夜は過ぎる、旅の日記を書いているといつのまにか寝てしまった。


という訳で旅日記は終わりです、恥ずかしくてどうしようもないけど、けど、これを読んで、馬鹿だなあ、自分で爆発してやがる、あっはっはっ。などと笑っていただけたら、それなりに意味のある旅だったという事になるでしょう、では、また。


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