「one of three days」「シーン1」「シーン4」「カワハラくん」
橋の上はいいねえ、女の子とか犬の散歩で通るんだよ、結構かわいい子もいるんだよな、まあ、声かける勇気はありません、やっぱ出会いはコンパかあ、先輩のコンパ行って酷い事なったからなあ、もう面倒、あんな工場絶対次のボーナスで辞めてやる、辞めてどうするかなぁ、この不況だし、フリーターじゃ女の子もなびいてくれないだろうしさ、煙草、あと一本かぁ。
やたっ、今日も来てる、いつもいるんだあの人、今日こそ今日こそ今日こそと言いつつもう一ヵ月、なんか接触は無いかしら、こっちからは声かけられないし、という訳で悩んだ末に出したのがこれ、ズバリ「煙草の火かして作戦」でしょう、いや煙草なんて吸わないけどね、歩き煙草してさもライターが無いって顔をして、「火かしてくださーい」って接触、でも「歩き煙草する女が嫌いな人」だったらどうしようというのが本作戦の欠点、まー本人も煙草好きだからそれは無いと思うのだけど、肉を切らせて骨を断つって言うのかな、乙女としてはやるしかないって。
今日のかっこだってなーんかゴダールの映画みたいじゃない、ひょっとして「女と男のいる鋪道」のアンナカリーナかも、どうしよ
♪デッテッテデッテッテデッテッテデッテッテチャーラリッラチャーラリラッ
♪スイム、スイム、スイム
って踊ってる場合じゃないのよ、気合入れろ、魂を入れ換えよ、今からわたしはクールビューティ、アンナカリーナ、画面はモノクロ、それだそれだ、行ってみよう、オースッ!
ちょうど橋の中央に男はいた、遠くを見て煙草をくわえ、風を待っているとこだった。
「すいません」
女が現れた、この暑いのに気合入れたかっこしてるなあなどと男は思った。
「煙草の火を貸してもらえたら」
「はっ??」
まずったか??と女は焦る
「ああ、いいですよ、ちょっとびっくりして」
男はライターを渡した、女は細い煙草に火をつけ、そしてゆっくりと吸い込む
むせないか??大丈夫か??落ち着け!!
「ありがとう。…煙草を吸う女ってやはりだらしないと思います?」
「いや、俺だって煙草吸うし、女性だからどうなんてのは無いです」
「いつもここにいるんですね」
男はこれって逆ナンかと思った
「風を待っているんですよ」
「風って」
「まってて、ほら来た」
橋の中央に微風が舞い降りた
「気持ちいい」
女はゆっりと目を閉じてそして言った
「生まれて来た日の風みたい」
「うん、まさにそんな感じ」
男の車の中、女は助手席にいた、車内ではピクシーズが申し訳ない程度の音量で流れて、街の光も流れて行った、あれから一ヵ月、ついに二人は一緒に飲みに行くまでの段階までこぎつけたのだった。
男も少し飲んでいて、これはあきらかに犯罪に抵触しているが男はそこまでリスクを背負わないと女は落とせないという事を知っていた、検問あったら全て終わるなあとか心の隅で思っていた。
女は少し酔ってそして物凄く期待していた、もしかして今夜が、とかなんとか、男もそう思っていた、いつ言うべきかあの禁断の言葉を。
前段階、外堀から埋めていこう、よし、しくじるなよ。
「今日は飲んだね、なんかあった?」
いつもあんなに飲んでるとは言えない
「ちょっとストレスがたまってたかなあ」
「そうか、疲れてたんだ」
「自分では分からないものね」
「…ねえ」
男は女を見つめた、慈しみが溢れていた
「甘えてもいいんだよ…」
キターッ!と二人とも思った、女はもうベトベトのゼリーになってしまい男の腕にすがって何もかも差し出してた、男は、冷たい、でも気持ちいいなあとか思った、そして男は禁断の台詞をついに言った。
それから男は橋に行くのを辞めた、女も橋に行くのを辞めた、そして二人は2度と会う事がなかった、しばらくして女は妊娠の可能性は無いと医者に言われて安心した。男は煙草を辞めて煙草を吸う女は嫌いだなどと思うようになった、男は工場を辞めなかったし、女は次の男を探して今夜はコンパの前の決戦でトイレで気合を入れている。
シャカシャカって鳴ってる
汗ばんでる、夏のべっとりとした空気、皮膚にいちいち絡んで来てさ、なーにもしてないのにべとべととなんなんだこれ、わたしに何の恨みがあのんねえ、とか言っててもしかたない。
なんで家にいられないのか、嫌いなのか、楽しいのか、楽しい時もあるけどさ、息苦しいんだよねえ
だから自転車をこぐ訳、自転車はいいよお、膨大な時間を消費するには最適、痩せるし、痩せたのか??それはまあいい、とにかくこぐのだ。
自転車しか無いんだけどね、ここから離れてどこか遠くへ、そして誰かと出会う方法、自転車しかないなあ、その自転車も親に買ってもらったものは嫌で自分でバイトして買ったんだ。
その神聖なチャリで夜を行く、楽しいよ、ひとりだけど、誰かに会う、何か見つけるなんて思いが溢れてさ、あうあう、こいじゃうよ、夜の田舎の寂しいネオンさんさようなら、もっと寂しくてもいいから次へ行かなきゃ、次って何か知らないけどさ。
川沿いを延々と3時間くらいかなあ、家にいるよりましだからってずっとこいで来た。
別に体育会系って訳じゃなくて、なんか焦ってるのかな、その焦りが足を動かしてるのかもしれないって自己分析してる間にここまで来たよ。
なんとなく海のにおいがするよ。
誰に向かってこのモノローグは語ってるんだろうねえ、自分でも分からん、いつか会う彼氏って奴に対してか、いや、いや、まさかあいつでは無い、断じてない、大体あいつはあいつと幸せだし、もう遠いし会わないし、それはそれで、とにかく。
まあ、汗だくでここまで来たんだな、海のにおいのする川まで。
自分のすむ狭い場所から解放されたんだ、それだけで嬉しいよ、自転車を置いてライトアップされた橋に今いる、こんなとこがあったんだぁー、嬉しい、橋を渡っている、なんか幸せ、一人だけどさ、なんかわくわくするんだ、なんでかなぁ。
橋を一人で渡った、橋には猫いて、凄く鳴いていた、猫は大好きだけどどうしようって思って、子供が「猫さん鳴いてるよ」っと言って、「猫さんがおとなしくなるまでここにいるから大丈夫」って子供に言うと「猫さんは一人で寂しいのかな」って言った、子猫は鳴いていて手がつけられない、まるで自分みたいだ。
一時間くらい猫の側にいたんだけど、猫は突然飽きたみたいにどこかへ行ってしまって、もちろん後を追ったけど人間のましてやか弱い馬鹿娘のわたしにはとても追いかけられなかった。
わたしの才能とは所詮自転車をこぐことなのかもなぁ、なんて橋でぐだっとしてる、工場が点滅してて赤く蒼く、気が遠くなりそう、あれって今もお父さんが夜勤してんだよなあ、甘いなあ自分、でもさ、綺麗、こんなとこで男の子に耳元で囁かれたらさ、気が狂うかもしれない、自分家ちとは大違いだ、ここが家だったらいいのに。
でも橋の上に誰と住むのか?ポンヌフの恋人じゃあるまいし、しかもあの映画のあいつらはめちゃくちゃだ、あんな生活!!
してみたい。
冷静な自分がツッコミを入れそうだ。
本音が出たね、お金なんて欲しく無い、誰か連れまわして堕落させて欲しい、ああ、うづくわあ、落ちたいよう、大好きな岡崎京子の漫画みたいに、ああ、落ちたい、ここから落ちてやろうか、なんて。
うああああ!
って叫んでみた。
でも叫んでも世の中なーんにも変わらないのだった、猫が鳴いていた場所に行って、下をのぞく、暗くてわかんないけど、ここに子猫が求めるいた何かがあるのかなぁ、落ちてみようかなあ、なんて思って。
ここから飛び下りるべきか、それとも黙って何もなかった顔で家に帰るべきか。
そんな馬鹿な事で、ずーっと迷ってた。
うあっ
って唸った、帰らなきゃって思った、本能で
ここから落ちたらもうあの気持ちいい感覚に出会えない
わたし、気持ちよくなりたい
必死でこいで帰った、もうべたべたで女じゃないみたいだった
けど、帰りたかった
深夜3時に自宅に帰り、窓から部屋に戻って、それから
ありがとうって涙が出た、いるのにさ、駄目なのにさ
気持ちよくて死にたくなった
ありがとうって世界を壊したくなった
壊してもまた会えるって、思うんだ、気持ちいい
わたしが壊れたのかな
どうしたらいいのかわからないけど、わたしは、今は、気持ちいい
だから、今までありがとうね
夜明けに狂ったように泣いて
ありがとうね
なんて思って(思いは全てを変えるんだよ)
わたしは犬みたいにずーっと眠っておかんに怒られて、今日も不機嫌。
彼女だとは気付かなかった、だって彼女は決してジーパンなんて履かなかったし、体のラインも変わっていた、服装もまるで女子大生みたいで、髪も少年のように短かった。
だから油断していた、まさかなって思って、でも目が合ってしまった、彼女だ。
僕は逃げようかと思った、でもどこへ逃げる、逃げてどうする、頭がパニックになった、グッドシャーロットの音も耳は入らなかった、彼女は意外な事になんと、微笑んだのだ。
僕は逃げる訳にはいかなかった、なぜなら僕と彼女はその昔、といっても3年くらい前に、酷い別れ方をしたのだった、だから僕はもう彼女と会う事はないだろう、例え会ってもお互い無視するしかないだろうと、そう思っていたし、それが当然だとも思っていた。
そんな彼女が微笑むなんてあり得ない、あり得ない、僕はどうしたらいいかわからないまま、ヘッドホンをはずし、彼女の方へ歩いて行った、逃げたかった、でも逃げられる訳がなかったのだ。
「島田さん」
と僕は言った。
「やっぱり、ずいぶん変わったねえ」
と言った、とりあえず頭に浮かぶ言葉をなんとか吐き出していた。
「びっくりした」
とだけ彼女は言った、迷いがなく、まるで子供みたいな顔だった。
そして僕らは喫茶店に入り、なんとなく話をし始めた、あまりにも彼女が自然体なので僕は戸惑っていた、あれからどうしただとか、あいつは誰とどうなったとか、あまり聞きたくない話を聞いてやはり胸に重い鉛をぶちこまれた気分になったが、彼女が怒りをみせないのが不思議だった、怖かったと言ってもいい。
「今でもあの車に乗ってるの」
と笑いながら言う。
「中古車買う金が無いから、車検に出した、まだ動くよ」
「ふーん」
と彼女は突然興味を失ったように窓を見た、瞬間間髪を入れず
「また乗せてくれないかなあ」
と言う。
「あたし免許まだ持ってないのよね」
少し笑った、僕は喜んでいいのかわからなかった、でも嬉しかった、もしかしたらこの3年の歳月を埋められる関係になるかもしれない、いやそんな訳ないじゃないか、葛藤と恐れがあった、だが、彼女は昔の彼女ではない気がした、文句ばっかり言って自分勝手ででも可愛くてどうしようもない子供だった彼女はすっかり大人になっている、そんな気がした。
僕たちは休日の昼にまた会った、僕は壊れかけの真っ赤の車に乗って、あの場所で待っていた、懐かしい思いにかられて泣きそうになってしまった、彼女は昔とは全く違う歩き方で、全く違う服装で現れた。
3年間に何があったのか僕も彼女も話そうとはしなかった、アルビルラヴィーンや元ちとせ、最近はやっぱタトゥーなんて音楽の話をして、調子の悪いラジカセでCDを鳴らした、空はどんより曇っていて、とてもドライブに適した天気ではなかった。
「海に行きたい」
と言い出したが、僕は反対した、曇りの日に海を見ても憂鬱なだけだ、閉塞間があってきっと泣きたくなる、まるでつげ義春の漫画のあれだよ、なんて説得するが。
「じゃあ、つげ義春を見に行こう」
と言う、僕たちは海へと向かった、海は予想通り憂鬱で、小雨まで降っていた、車を停めて僕と彼女は3年ぶりに並んで歩いた、でも3年前とは何かが違っていた。
背が伸びたのだ、昔は僕よりも小さくて抱き締めると調度よい身長だった彼女は、もう大人になって僕を追いこしているのだ、だからこそ、あの時微笑んだのだ。並んで歩いていても彼女の方が背が高くて僕は見上げててしまう、彼女はスリムパンツにシャツにショートカットで身体から自由が吹き出ていた、僕は性的興奮をどうにかやっつけようと必死だった、あんな酷い別れ方をした彼女が自分より大きくなってしかも幸せそうに歩いていて、しかも抱き締められる距離にいるのだ。
「背が伸びた?」
と聞いた。
「伸びたよお、もう服とか全部変えちゃった」
僕は憂鬱な海岸で彼女にキスをしようとした、したかったんだ、だけどそれは届かなかった、だって彼女の方が背が高いのだから、しかたない。
「なんでキスしたいの?」
と彼女は聞いた、僕は突然何もかもが崩れてしまい、その場に土下座してしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「なに謝ってるの、意味わかんない」
僕は土下座して泣いた、見上げると彼女はきれいだった、大きくて昔のピリピリしたところがなくなってて、僕は涙がとまらなくて困った。
「わたしね、あれから太ったの、食べても食べても、もっと欲しくて」
彼女はくるっと後ろを向いたままで話した。
「70キロぐらいになって、これじゃ駄目だなって思って、それからスポーツジム行って痩せようとした」
「痩せたんだけどさ、横の部分は落ちたけど縦の部分だけ残ってて、背か伸びたのはそのせいかな」
振り向いた、そして笑った。
「なんかさー、生まれかわったって気分でさー」
それから海に向かって
「あんな事もあったよねーなんて、もうどうでもよくなったんだよね」
「でも許さないからね」
振り向かないで言った。
「うん、許さなくていい」
僕は言った。
車の中で彼女は昔の空気を戻していた、今まで無理して張り詰めていた空気を吐き出したのか、眠ってしまった、僕もすっかり疲れてしまった、この娘に会えるのは人生で今夜が最後かもしれないと悟った、でももう泣く事は出来なかった、車を停めて、眠っている彼女の僕なんかより長い、しなやかにすらりと長い素敵な足の上に僕は頭を落として眠った、ジーパンの下から愛おしい彼女の体温が伝わって来て、このまま死んでしまえたらいいって思うくらい気持ちよく僕も眠った。
目がさめると、僕は一人部屋にいた、夢だったのだ、さつきまでのあの愛おしい体温がまだ生々しく記憶に、この頬に残っていた、僕はしばらく何の事かわからずぼんやりしていた。
突然、或瞬間、もうとまらなくなって、僕は叫びだした、涙と鼻水が一緒に出て、僕は叫ばなくてはいけなかった、獣みたいに僕一人の部屋で泣いて叫んで、自分の身体や壁をばんばん叩いた、そして疲れて、涙も出なくなって、そして布団をかぶって耳と目をふさいだ。
結婚するって言ってた、楽しそうに、当たり前に、そうなんだけど、わたしは心が逆さにめくれて赤むけの化け物になってしまった、自分でも自分が気持ち悪い、でも自分を嫌がる余裕なんてない。
勝ち負けなんてない、時間がただ過ぎていく、そうなんだけど、そうなんだけどさ。
負けたのかなって思う、でももともと勝負なんて好きじゃないので、勝つ事もありえなかった訳で。
じゃあなんで真っ赤な顔して近づいて来たの、なんで髪に触ったんだろう、なんで好きになってくれたのかわからなくて、でも好きになってしまって、そういう事ってあるじゃない。
馬鹿みたいって言われたい、でも誰に言える、こんな気持ちどうすればいい、食べればいいのか、しかしわたしに食欲はない、あるといえば結婚する相手を探し出して全身の皮を剥いでぶっ殺したいって衝動、当たり前だよね、女なんて大嫌い、きしょくてさ、こびばっか売ってさ、犬じゃん、あたし犬嫌い。
自分が犬だからって訳じゃなくてね。
学生の時に聞いたムーンライダーズのCDを聞いている、サザンもボウイも好きになれなかったわたしだけど、ライダーズだけは心を許して聞けた、共通の秘密を知ったみたいな音楽だった、でも今は赤むけの心をもっともっと痛めつけてくれる、「鬼火」だって歌ってやる。
抱き締めてやる事もできない 愛を突き刺す事も出来ない 夢みる事もなにもない
わたしは乾いているの、あなたが欲しいの、あなたでなくては駄目なの、あなたでなくてはわたしは濡れたりしないの、他の誰でも駄目なの、ここでどうでもいい年下と寝て自分を誤魔化す汚い女にだけはなりたくないの、でもなってしまうかもしれないけど。
どうしようかって死ぬしかないじゃないの、生きてたって結婚してたらかなわないじゃない、かなう人っているのかな、いると面白いんだけど、おーい、いますか?
返事がないのでやはりいないんだろうな、ちぇっ、自慰したい気分じゃないし、とにかく思い出さないようにしなくちゃ。
あ、あしたの仕事の段取り考えてる、最悪だ、わたしが死んだら何の意味もないのに、また考えてる、仕事があるって事はある意味現実逃避だからね、考えてもいいんじゃないのかしら。
飲めないお酒を買って来ました、コンビニの男の子も結構可愛いのね、でも、文化的な事は知ってるのかなあ、一緒にミニシアターとか行けるのかなあ、めんどくせーや、もう、めんどうなのはヤ。
ビールは太るから飲まない、太るっていってもこれから死ぬって気分で太るなんて考えてるのも変な話だわね、でも、太りたくない、死ぬならきれいに死にたい、胸とか無いけどそれでいい、わたしにはそれが似合っている、適当に痩せてて、適当に女で、でも太るのはヤ。
にのうでが好きって言われて、頭をにのうでののせられて、なんか赤ちゃんみたいだったんだよね、可愛かったんだよね、赤ちゃんって出来たらみんな寝顔なのかなって、チューした、ああ、思いだしたじゃないの、全く。
わたしこれからどうするんだろ、どうなるんだろ、死ぬのか、ぜんぜんわからない、全くわからない、とりあえず爪でも磨いて毛でも抜くかな、いやだ、生きる気ばりばりじゃん、なんで生きるんだろ。
結婚ってなんなの全く、結婚した友達みんな馬鹿になっちゃって最悪よ、わたしにライダーズを貸してくれたAなんて、聞いた?って聞いたら、何それ?って返されちゃった、どうしたの?って言うと、突然通信販売の話はじめてさ、つまんない女になっちゃったなあって、悲しかったな。
あんな結婚する奴なんてやっぱつまんないのかな。
つまんないんじゃないの。
つまんねーよ。
ったく、だせー結婚してんじゃないよ、チューハイもう一本買いに行かなくちゃ。
もう一本もあけちゃった、結婚ってなんなのよ、ふざけてんじゃないよ。
どうしよう、こんなに酔ったら死ねるかなあ、どうやって死ぬの。
首つりが楽なのかなあ、ロープなんて無いけど、じゃあ、カッターで切るか、死にたいなあ、今季節が冬で死体が雪に隠されたらいいのに、死んで醜くなるのは嫌だあ。
腐ったわたしをあいつに見られて泣かれるなんて最低じゃない、美しいわたしを見せて後悔させたい。
でも、美しく死ぬ方法なんてない、自殺は醜い。
こらー野良猫うるさい、わたしだってうるさいけど。
あああ。どうしよう、どうしよう、もう誰にも会いたくないよう。
寝ようか、寝たらなにか解決するかもしれない。
銃でも買って結婚式に乱入してみんなぶっ殺して自殺するのもいいわ。
銃が手に入ったら絶対するんだけどなあ。
めんどくさいのでしない。
結婚式には一人でいよう、ムーンライダーズを聞いて、自己満足しよう。
せいぜい不幸せになって下さい、あんた人生ドブに捨てたよ、気付いてないけど。
まあ、ドブが好きならドブでいきなさい、わたしは一人できれいでいるよ、傲慢な訳でなく、自分にごほうびあたえなくちゃね、つまんない奴と結婚しなくてほんとよかったって、思うよ、きっと。
それできれいなわたしとつまんないあなたは出会って、あなたは恥ずかしくて他人のふりをするの、分かってる、わたしは許してあげる、もしまた生まれ変わって出会った時、わたしはあなたを救い出してあげる。
そうか。
わたしは立ち上がり、フンッと鼻息を出した、物凄い鼻息だった。
そのためにわたしは生まれて生きて死ぬのか、じゃあそれはそれでいいじゃん。
酔ったわたしは自慰をして寝た、生まれ変わったらまたってそんな思いがわたしを絶頂に押し上げた。
女って駄目だなと思いつつも嬉しくも、でもせつなくて泣いてしまって、なにがなんだかわからなくて、どうでもよくて、部屋がグルグルまわって、あはははは、楽しい、死にたい、ばかねえ、って。
翌日はワンビースで涼しい顔で出社した。
だれかわたしに触ってごらんよ、殺してあげるから、そう思いながら涼しい顔で接客。
ギリギリが楽しい、いつ壊れるのかなあ。
壊してよ。
「だって、上司が怖いんだもん、自衛隊みたいでさ、そんなの性に会わないよ」
との事、それで会社の友達から仕事まわしてもらってなんとかやってる、ほんとやってんの?
「やってます」
ハルオの趣味はテクノ、テクノなんて全部同じじゃん、ねえ
「違うよ」
どう違うの?具体的に言える。
「一言では、その、無理だけど」
この後、グダグダと訳の分からないDJとか機材の話が続くのでカット。
ところでハルオの自慢がこれ、電気のオールナイトほぼ収録してCDRで年代順にまとめてるの、凄いよ。
まあ、これくらいでいいかな。
「俺の存在ってそれくらいなのかよ」
空気みたいなもんね、でもね、空気ないと死ぬでしょ。
で、ハルオが急に欲情して来て、ここでカット、このあとはエッチをいたしました、たは。
うちって実家パン屋なのね、だからうちで売れ残ったパンは全部ハルオの主食になってます。
ここがうち、奥にいるのがお父さんです、はいお父さん。
「…いい、いい」
というキャラなのね、いつも照れてビデオ向けてもコメントないんだ、つまらないというか可愛いというか。で、お母さんは婦人会で手芸や洋服の直しとか、そういうのをやってる人です。
ここが駅前のその婦人会の店、トレードマークのクマが可愛いね、ほらクマ。
はーい、こんにちは。
「こんにちは」
こちらがお母さんです、似てる?ちょっと確かめてみようか。ああすいません。
「似てるー」
嫌だな、ねえねえ、今は何をやっているのですか?
「来週のフリマに出す小物を作ってるところ」
またこれ作んの、家の至るとこあるよね、トイレとか
「だから家以外の人も見てもらえるチャンスじゃない」
売れるのかな、こんなの?
この婦人会の人達も別に儲かるとか意識なくてね、自己満足と暇つぶしにやってる感じがする、まあ主婦って感じね、わたしも主婦になったらこんな事するのかな、絶対したくないし、しません。
でもお母さんを嫌いな訳じゃないのね、だって一緒に買い物行くと楽しいし、お金足りないとき買ってくれるし、スポンサーって立場なの、でねこのわたしは何なのと言われても、まだ答えられない。
あっ、これだ、ミルククラウンとTTと一緒の時だ、美容専門学校の時の友達でねそれから今もずっとつき合ってる、こっちがミルククラウン、背が高くて仕切るタイプ、でも自覚してなくて嫌味もないし、凄く頼りになる、でも彼氏いなのね、なんで?
「ちょっと、そんな事聞く?」
こっちがTT、TTはねえ、なんだろうねえ、全てが開いてるって感じ、楽しい時は本当に楽しいし、怒ってる時は怖いし、ほんと正直な子なんですよ、ね。
「その紹介やめてよ」
TTはギター弾いてるんだよね、ちょっと弾いてみて
「今、無いし、夜の駅前じゃないと駄目なの」
なんで駄目なのかよくわからないけど、TTは男の子と一緒に路上で歌を歌っている、でもその男の子って彼氏じゃないのね
「違う、だってほとんど会わないし、音楽以外の共通点が無いから」
それじゃあ、これから彼氏に発展なんて事になるんじゃないすかあ
「嫌、絶対ない」
本当だろうか、TTのライブの映像もあるんだよ
はい、これがTTと男の子、ハモリ上手いじゃん、男の子はかっこいいけどおとなしいね、TTがつまんないって言うのも分かるな、ハルオくんもどっちかと言うと、こっち系だし。
TTは、逆に襲って欲しいくらいの男じゃないと駄目なんだろうね、それも分かる、わたしとハルオがつき合ったのもほんと偶然だもん、その映像は無いけどね、やっぱ急に抱きついて来たの、キャラ変わってたもん完璧に、ちょっと怖かった。
でも、その瞬間がないと恋人にはなれないし、わたしもそれを期待してた、だから結果的にはよかったと思う。
TTもこの男の子もお互いくっつきたいって思ってるとわたしは思うんだけど、TTって普段豪快なくせして、恋愛は受動的なんだ、この前もこんな事言ってた
「彼氏と遊ぶよか、こうやって三人でいる方が絶対楽しい」
二人とも彼氏いないし、わたしもハルオにははっきり言って不満持ってるし、だから二人の前ではノロケは言わないんだ、たぶん言うと関係がこじれて楽しくなくなる、そういう失敗例をいくつか知ってる。
ミルククラウンは前彼がいたんだけど、よっはぽど酷い別れ方をしたのか、その話はあまりしない、ちょっと恋愛サギっぽい話なんで詳しく聞きたくなかったし、でもミルちゃんはいい女だから自信を持ったらすぐ彼氏なんてできると思う、ていうかわたしが男だったらミルと結婚したいって思う、しっかりして一緒にいて楽チンだし。
ミルは頭もいいから学校でも存在感あったな、卒業してからは家庭教師のバイトをずっとしてる、と言っても小学生のみ、子供が好きなんだって。TTとわたしはフラフラしてる、TTはまだ歌うって事があるから羨ましい、わたしはパン屋の手伝いをしながらハルオのとこに通って、定期的にエッチして過ごしてる、二人から見たら幸せで羨ましいらしいけどさ、わたしは二人の方が羨ましいよ、だって、自分の好きなものが分かって、その為に生きてる訳でしょ、わたしにはそれが無いの。
だから、わたしは、ビデオカメラを買ったんだ。
車を止めて土手を歩く、彼女は着いて来る、いい感じだ、土手からのコンクリの階段を僕らは寒い風で縮こまりながら降りて行く、いつもは憎たらしい風なのだが、不思議だ、彼女がいるだけでこの風すらも愛おしくなってくる、まるで僕らのロマンス(だったらいいのに)を演出してくれているかのようだ。
僕も、そして彼女も子供といえば子供だった、彼女の目はいつだって子供の様だ、僕は嬉しい、なんだか嬉しい、だって、こんな事僕と彼女の二人だけにしか起こらないのだ、そんな化学作用ってあるのかな。
僕らは川に降りて、干上がった石の大地の上を闊歩した、風がきつくて素敵だった、石を投げた、誰もいなくてぼくらは二人でじゃれていた、犬のようだった、寒くて麻痺していた、プライドとか照れとか、そんなものいらないって、ぼくは抱き締めていた、ふざけながら、それでも、目ん玉に「すっきっだっよぉーー」ってでっかいゴシックのフォントで彼女にアピールした、彼女は目を落としていた、それは恥ずかしいのか、それとも嫌いなのか。
嫌いな訳ないでしょ。
彼女は僕を見た、斜体で「ワカンナイヨ〜」と出ていた、目のディスプレイに出ていたんだ、その瞬間にたまらなく好きになった、沸点があがった、風はいよいよ冷たく寒く痛く僕らを叩いた。
彼女は走った、訳なんてない、僕も走った、訳なんてない、僕らは走ることしかできなかった、風は僕らの味方だった、冬の風がこんなにも暖かいなんて初めて知った、僕は彼女のお尻を見ていたし、彼女はお尻を見られたがっていた。
彼女は「見るな」と乱暴に言った、その粗野な感じが、「見ないでよ〜」と言うより何十倍もの破壊力で僕の脳みそを刺激した、僕はそれでも見たし、彼女のありとあらゆるところを見た。
空気が濃密になり、僕らだけが味わえる特別な空間が現われた、僕はついに抱き締めたのだ。
寒くて、彼女を抱いたからといって暖かくなるはずはないかった、ないはずなのに、僕はカアッとなってしまった、彼女の肌が僕にくっついてしまいそうだ、ほっぺがさ、こう「好きよ、好きよ」って離してくれないくらいに、そんなに彼女は柔らかくて素敵だった。
だから僕はキスをした、キスというものを論理的に考えてはいけない、僕は唇が欲しかった、だから彼女の口の中を全部飲んでしまった、甘くて美味しかった、甘美という意識が身体に流れ込み溶けていった、それは熱くてマグマみたいなアイスクリームだ。
もう僕は彼女と一つにならなければならなかった、それは運命でも命令でもない、歴史の事実の一つなのだ、僕は彼女を抱き締めなければいけないのだ。
冬で河原で僕らは愛しあって、ただそれだけで、その為に世の中の役になんにもたたなくて、そんなライフスケッチ。
僕の母は若く、歳の近い妹がいる
僕達はいつも3人でじゃれあうように暮らして来た
電車の中でも僕をまん中に二人がはさまる感じですわり
ときたま位置を交換して楽しんだ
僕たちの父は、海よりのホテルを経営していて金持ちだ
だけど母と父はうまくいかなかった
自由人で先を考えない母、傲慢で理想家だった父
僕達が4人でホテルで暮らした記憶はほとんど無い
だが、母と父には約束があって
ぼくらは夏の終わりの数日間だけ
里帰りと称して、父のホテルに滞在する
そこでぼくらはアンファンテリブルみたいに無邪気に過ごす
父も母も、その数日間だけは絶対に争いを起こさない
これが決まりだった
雨の空港の中をガラガラと音を立ててぼくらは到着した
せっかくの夏を大雨がだいなしにしていく
それを思うと悲しくなるのだ、そんな時にも妹と母は
僕の気持ちを察してしまう、そしてくるりと囲んで
また無邪気に笑う
バスは貸しきり状態だった
バスの中で僕は眠くなってしまう、母と妹の間で僕はうとうとしている
本当に寝てしまいそうな時、はたと目をさまし
いつもの様に場所交換などしたりして過ごした
果たして、ホテルに到着した瞬間に雨は上がっていた
ホテルでは映画を撮影しているらしく、そのスタッフがたくさん
宿泊していて、なんだかいつもの夏とは違うみたいだ
父は、いくらか老けてみえたが、あいかわらず自信に溢れた顔つきで
ぼくらを迎えた、声の巨大さは年々増すばかりだと思う
いつもの部屋で我々は食事をとり、父と母は相変わらず会話をしなかった
それでも全然気まずい空気は作らない、不思議な夫婦だと思う
ところで父には愛人が当然のごとくいるのだが
その愛人の子供を預かっているというのだ
情けない事に愛人は旅行するといって金を無心して
それいらい姿を見せていないという
父は紹介すると行って連れて来た
少年だった、同い年か、いや年下なのか年上なのかは分からない
混血児なのだろうか、肌がカフェオレみたいに綺麗だ
目も常に輝いていて、僕なんかよりはるかに強い生命を感じた
負ける…、正直、第一印象はそう感じた
少年もまた無口であった、妹は少年の事をどう受け止めてよいのか
分からない様子だった
翌日、目をさますと雨も雲もすっかりなくなってしまって
僕は朝早く目がさめた、ホテルの裏には巨大な木が生えていて
それは毎年恐ろしいほどの成長をづけている
僕はそれが見たくてしかたないのだ、その木は去年みた木と同じものではない
と思えるくらいに伸びていた、今年の雨も影響しているのか
そんな事を考えている時
ぼそぼそと声がするので裏庭をどんどん入っていく
裏庭の奥には林があり、そこで父が誰かと話をしていた
こんな表情の父ははじめてだった、父は父というよりこの人という意識しかなかった
相手は映画のスタッフなのだめろか、近所の人だろうか
僕は興味を失って部屋に戻った
ホテルでは撮影が再開されていた、階段で頭の禿げた監督が
アクションの演出をやっていた、思いのほか大掛かりなので驚いた
役者が殴られて僕のすぐ足元まで飛んで来た。
昼になると僕は少年と自転車に乗って遊びに行った
町は大雨で浸かっていた、地面には薄く水がはっていて
まるで水中にうかぶ町みたいだ
自転車で水の中へ何度もつっこんで大笑いした
少年は言葉はよく話せないみたいだが
とにかく元気だった、自転車も必死にこいでも着いて行くのが大変だった
へとへとになると少年は足を止め、あははと笑う
ぼくらは下町の商店街に賭け降りた
お酒を飲む店や、魚料理をだしている店、みんなしまっていて掃除をしていた
少年は自転車をとめて、ついて来るように僕に目が合図をする
僕は自転車を置いて少年について行った
海岸に続く道だった、自転車で入れないけものみちを歩く
突然、僕らの前に穴が現れた。それは人工的なもので
雨や風で出来た自然の物体ではないのは子供の僕にでも分かった
少年は当然みたいに穴に入っていく、僕は着いて行くしかない
中は洞くつみたいで綺麗に掘られていた、人工の階段があり
そこを僕らは降りていく、昼間なので明かりがどこからか入って来る
そんな不思議なつくりだった。
階段を降りて鉄製の扉をあけると、海に出た。
いや、海というより、内岸の池みたいだ、とても静かで波すらない
扉の向こうには小さな内陸があって、そこにはたき火の後がいくつもある
樹木が若干おおい茂っていて、そこに少年は走り、そして僕を見た
どきりとした、ここは何なんだろう?彼は僕に何を伝えたいのだろう?
きっとここは少年の思い出の場所なのだ、そう思った
少年はそこに座り込み、僕は困ってしまっていた
ホテルへ帰ると、映画の撮影が大詰めを向かえていると言う
東洋人のメイドのリンさんが、僕にそう教えてくれた
驚いたのは、僕らが泊まっている部屋が撮影に使われている事だった
映画は昔の名作のリメイクらしく、その昔の原作の映画を上映して
それに登場人物が絡むという実験的な事をやっていた
僕はまだまだ小さい頃にテレビで見た記憶がある、確か前後編分けて
放映していた、面白いとか思うものではなく、映画ってこれなんだ
なんて思ったっけ
階下では、スタッフらしき紳士が、両目に涙を浮かべて撮影風景を見ていた
その瞳には、昔の名画のフィルムの光りが写っていて、僕はぎょっとした
映画のラストシーンは僕のベットで撮影された、よく知らないけど
巨大な貯金箱が割れて、中から小銭が階段に流れ出す場面らしい
僕は階段の下でラストシーンの撮影を見ていた
パカーンッ!
巨大なブタの貯金箱が砕かれ、そしておびただしい小銭が階段からこぼれていく
カット!その監督の声の後にも階段からは小銭が流れ落ちていく
母が慌てた、拾うのよ、500円玉を、100円ではなく、なるべく500円を
ぼくらは小銭をかき集めた、なるべく500円っぽいのをズボンのポケットに入れた
しばらくホテルの客も小銭を集め、パニックになっていたが
監督が、声の割れたメガホンで言うのだった
「これは全てニセモノです、集めても何の価値もありません」
母はがっかりして小銭を捨てた
「ホンモノの監督なら、本物の銭を使わなきゃ!」
母らしいユーモアだった。
そして撮影が終わった、スタッフやキャストは物凄い勢いでチェックアウトして
それで全ての騒ぎが終わったと誰もが思った
ところが、映画の撮影が終わった日からとんでもない事か起きはじめた
リンさんが僕を呼ぶのでついて行ったのだけど
突然壁を押した、そこには、秘密の部屋があるのだった
設計上秘密になっている隠し部屋、そこへ僕を押し入れて言うのだ
あなたのお母さんもここでやっているのよ
何の事かはなんとなくわかった、それは別段驚く事ではない
問題はその部屋が妙に粉臭い事だった
そう、その夜からホテルは死んだ
原因不明の粉が降ってくるのだ
部屋に白い粉が降る、もちろん、空から降るのではなく
空気中に発生するみたいだった
最初はぼくらもきゃっきゃって遊んでいた
ところが父がやって来て僕に向かって本気な顔で言うのだ
「消毒はしたのか?」
何の意味なのかはさっぱり分からない
「見てろ、こうやるんだ」
父はズボンを下ろし、消毒液がついたタオルで下半身を噴いている
「お前もやりなさい!」
父は真剣な表情で少し怖かった、だから真実味があった
僕も試してみた、ところが、どこをどう拭くのか分からない、これでいいのか不安だ
「これでいいの?」
と父に尋ねる
「こうだ、見てろ」
父は、母や妹のいる前で全裸になり、消毒法を実践する
妹は恥ずかしがって隠れてしまい、母は下品に笑い出すしまつ
とりあえず、僕は僕なりに大事な部分を消毒した
粉の正体を父は知っているみたいだけど、誰にも説明はしなかった。
最後の朝、母は父と例の部屋で関係していた
僕はリンさんに連れられてその様子を見てしまった
父は、母を突然突き飛ばすと、秘密の部屋から全裸で出て行った
残された母は、ただ泣きわめいていて、布団を引きちぎって獣の様だ
あまりの事にどう行動していいか分からないが、両親の行為自体は理解できる気がした
その時、僕は突然リンさんに後ろから羽交い締めされて
からかわれた、不思議と気分が良かった、リンさんを逆に後ろから抱いて
身長差がかなりあるのだけど、リンさんのズボンをゆっくりと下ろして
そして、妹を呼んだ、三人で粉にまみれて遊んだ、アンファンテリブルだ
妹とリンさんが激しく求めあうので僕は押し出された形になり
そして目が覚めた
すでに粉はホテルに蔓延していた、いや建物の外にもその勢力を広げようとしている様子だ
母は泣いていて錯乱している、妹は東洋人と抱き合っている
どうしたらいいのか
僕は父と少年を探すしかないと思った、そして自転車に乗り、サドルを漕いだ
街には粉と大雨が点在していて、僕はけちらす様に駆けていった
自転車を止めて、けものみちを走り、洞くつへと降りた
父はここにいると思ったからだ、金属の扉の前にはホテルの職員がいて
僕は姿を隠した、職員が去ってから、僕は扉を開けた
池のような海の前で何かが燃えていた、骨だろうか
分からない、ただ、巨大なカマが火にかけられて乾燥しきっていて
ただ白い灰だけが残っていて、その残り火がまだ暖かいのだった
少年はそこにいた
彼は目を光らせて僕を待っていたのだ
そして、プレート状の不可思議にものを僕に渡した
飴細工みたいな不思議なプレートは触るとあっけなく折れた
それを見て、少年は怒った、僕を殴り、プレートを大事に取りかえした
僕は理解できなかった、そのプレートは何なのか
ここで何を燃やし続けているのか
その時、父が現れた。父は少年を激しく叱咤し、プレートを僕の手に戻した
「私達はここで死ぬ」
「君は生きなさい」
「ここからなるべく離れて」
「その君が持っている板、それは食べ物なんだ、世界がどうなっても食べられる食べ物」
「これから世界がとうなるかは誰にも分からない」
「わたしのホテルでもその危機に関して実験して来た」
「だけど、もうふせぎようがないのだよ」
「この子の母親もその為に犠牲になった」
「こんな父ですまない、君には生き延びて欲しい」
「君には守るべき家族がいるだろう」
「うらやましいよ」
父は淡々と語った、僕はプレートを受け取りなから、全然分からないまま答えた
「あなたにも凄い息子がいるじゃないか、僕は負けたよ」
と言った、少年と父は寄り添っている。そしてやはり少年の目は僕よりも輝いていた!
「もうここまでだ、後は頼むぞ」
僕はその言葉を聞いて洞くつを駆け登った、自転車で水をはね、粉を蹴散らして
ホテルに戻った、だが、ホテルは死んでいた
母は父がいないのでヒステリーになり、妹はリンさんと愛しあっていた
僕は水をひっかけて二人を起こした、リンさんは半分粉の虜になっている、もう駄目だ
僕は残酷にも自分の家族だけを起こした
「かあさん、しっりして!もうとおさんはいないんだよ」
「はやくここから逃げなきゃ!」
粉のついた服を叩きながら、そして母の頬を叩きながら僕は言う
「しっかりしろー!」
母はやっと目が覚めた、マスカラを拭いて冷静に戻った
「そうね、5分で荷物をまとめましょう」
いつもの母だ
僕は粉まみれのジャケットを投げ捨てた
この粉がきっと駄目なのだ
いつもの夏休みとは大幅に違うバカンスになってしまった
しかも、もう父とも会えない、あの混血の少年とも
僕らはホテルを出て、いつになく交通渋滞している坂道を荷物を押して歩いた
地獄にひっばられいてるような気分だった
車のクラクションがついもより大きい、足首を掴まれているみたいに僕らはホテルを出た
暑い夏の最後の昼だった、舗装すらされていない坂道を僕は荷物を押してあがった
これを越えたら、きっと助かる、そう思って、そして歩いた
バスターミナルのミドリのリノリウムの床のキッキュッという音についに再会した瞬間
「助かった」と思った
バスを待つ間、もちろん僕らは母と妹と寄り添って座っていた
それは団欒だった。
ある日、親友の清美に肩を押され、カワハラくんに告白してみました、カワハラくんは「ええよ」と小さい声で言いました、夢の様でした。
ところでわたしは、その頃、カワハラくんがどういう人なのか、正直よく分かりませんでした、ただ好きなだけでした、でもカワハラくん以外の男の子を好きになる事などありえません、絶対になかったと今も思います。
カワハラくんの友達は、ちょっと怖い感じの人が多くて、カワハラくんはわたしを友達に会わせてくれませんでした、カワハラくんはわたしを誰にもとられたくないので、そうしてるんだ、と説明してくれました。
カワハラくんは、わたしの誕生日の12月13日に、花束をくれました、「そこの商店街のとこの花屋から貰ってきた」と得意そうにいいました、カワハラくんがわたしの為に花を、なんて思うと嬉しくて涙が出てきそうでした。
カワハラくんとデートしました、遊園地へ行って、わたしの手作りの弁当を食べてもらおうという魂胆でした、ジュースを忘れたので、近くの自動販売機に行きました、わたしがポカリスエットを買おうと、お金を入れました、が、ボタンを押しても出てこないのです、するとカワハラくんが「どないなってん、こあらっ!」と販売機をぼこぼこに蹴りました、するとポカリスエットが出て来ました、カワハラくんはにっこり笑いました、わたしは少し、カワハラくんが怖くなっていました、だけどカワハラくんが笑ったので、やっばり楽しかったです。
カワハラくんは「今度ドライブ行こう」と言いました、「だってカワハラくん、免許持ってないじゃない」と言うと「バレへんて」などと言って太陽みたいに笑いました、わたしは、ああカワハラくんなら、なんとかなるんだ、と安心していました。
カワハラくんは、とても大きな車で現れました、名前は知らないのですが、とてもスピードが出そうです、わたしは車に乗っり、カワハラくんは思った通りスピードを出してごきげんそうでした、「カワハラくん、あんまりスピードだしたら危ないよ」
そっかそっかと、カワハラくんは笑ってスピードを落としました、これから二人でいちゃいちゃできるのかと胸を熱くしていると、そんなにスピードだしていないのに、パトカーがサイレンを鳴らして「そこの車、止まりなさい」とばりばりに割れた声で言われました、カワハラくんはスピードをあげてバトカーから逃げようとしました、わたしは怖くなって「止めてよ、止めてよ」と言いました、カワハラくんは止めてくれませんでした、わたしはあちこちぶつけて、怖くて泣き出しました「うるさい!」とカワハラくんは言って、それで電信柱にぶつかりました、わたしは気を失って、それから先の事は何も覚えていません。
気が付くと病院でした、お父さんとお母さんが来ていました、お母さんは泣いていました、わたしは右足を複雑骨折して半年以上入院し、留年しました。
カワハラくんは、警察に捕まって、遠いところに行きました、もうここには帰ってこれない、とお父さんが言いました、帰ってこさせない、だから安心していい、と言いました、はあ?何を言っているんだあ?とわたしは思いました、どうやら、両親はカワハラくんがわたしを半ば誘拐でもした様に思っているようでした、現実は全然ちがうのにと悲しくなりました、もうカワハラくんに会えないので何度も何度も泣きました、でもカワハラくんとはまた会えるだろうと希望を持って、2年たちました。
1年留年したわたしが、卒業しようという頃です、校門にカワハラくんがいたのです、信じられませんでした、カワハラくんは「迎えに来た」と言って、わたしをとなり町のアパートに連れて行きました。
カワハラくんは、どう云う訳か、お金を持っている様でした、「もう誰にもわたさない、一生大事にする」と言ってキスしてくれました、それはとても熱くて甘くて、最高のキスでした。
わたしはもう実家に帰る気は無くなってしまいました、ここで、いつまでもカワハラくんと一緒に暮らして行きたいと思いました。
とりあえずカワハラくんが服を買って来てくれました、それは、ちょっとおばさんチックで、派手な色使いでヤだったんですが、身を隠すにはちょうどいいのでがまんして着ました、着てみると、自分がとても大人になった様な気分になれて不思議でした、わたしは本当に大人になったのかも知れなかった、ついでに髪をブリーチしてみました、これで誰もわたしだとわからなくなりました、すっかり変身した自分を鏡で見て楽しんでみたりしました、なんか嬉しくて、楽しい日々でした。
カワハラくんは昼前にでて行き、夜中に帰って来ました、ひどく疲れている時もあれば、傷だらけの日もありました、わたしは料理を作って洗濯して、カワハラくんがなるべく楽になるようがんばりました。
カワハラくんの舎弟と称する男2人にやられました、最悪です、全然気持ちよくもなかったし、カワハラくんにくらべたら動物以下です、カワハラくんの舎弟じゃなかったらシチューの具にしてやる!と思ってなんとか我慢して泣かないで終わりました、カワハラくんは「男の面子や」と言うので、わたしはぶん殴りました、カワハラくんは殴りかえさず、「すまん」と言って、舎弟とどこかへ遊びに行きました、わたしの存在はなんなんでしょう、悲しくてわんわん泣いてしまいました、カワハラくんは大好きだけど、時々怖くなる。
カワハラくんは本当の極道になってしまいました、カワハラくん、ごめんなさい、わたしは実家に帰ります、明日の夜帰ります、カワハラくんとこれが最後のセックスになるのかと思うと、気持ちよくて、切なくて、頭がおかしくなりそうでした、でも、それを顔に出さない様にしました、でも、カワハラくんやっぱ、最高、捨ててごめんなさい、忘れないからね。
カワハラくんに逃げ出すとこ見つかって、ぼこぼこに殴られました、口の中が切れて血の味がしました、どうなってるのか分からないけど、病院なんて絶対行けないので、一日中部屋にいる事になりました、あたし何の為に生きてるんだろ?今頃、清美は会社の同僚とバーベキュー大会とかやってるんだろうな、あたしは、こんなとこで何してんだろ?でも、それは、あたしが馬鹿だからしかたないと思って、何日か泣いて過ごしました、もちろん、カワハラくんに気付かれない様に努力したよ、気付かれたら、またぼこぼこにされるから、なんでこんなに好きなんだろ、こんなにひどい事されたのに、やっぱ、カワハラくん好き、大好き、やりたい、今夜したい、カワハラくん。
カワハラくんの護衛つきで、やっと外に出れます、嬉しい、コンビニで立ち読みして、化粧品買って、お酒買って、楽しかった、へへ、でも、帰り道で、カワハラくんがおしっこしたいというので待ってると、酔っぱらったおじさんがあたし見つけたの、こないで、こないでって思ったんだけど、おじさん来たのね、お姉さんどうしたの?一人?一人は危ないよ、怪我したんだね、気をつけなきゃねえ、などと赤ら顔で一方的にしゃべりかけて来るのですが、困ります、もしカワハラくんに見られたら、大変と思って、無視して歩きだしました、でもおじさんはわたしの後を付けて来たのです、おじさんが送ってあげるよ、などと言ってるとこをカワハラくんに見られたのです、あちゃー、と思いました、カワハラくんはおじさんを見るや否や、ぼこぼこにして前歯を折ってしまいました、おじさんは「助けてくれー」と泣いて哀願しましたが、逆にそれがカワハラくんを怒らせたみたいです、もう顔が血まみれになるまで殴りつけ、おじさんは意識をなくしていたと思います、わたしは「もういいよ、逃げないとやばいよ」と言うと、カワハラくんはいつものカワハラくんに戻って、「そうだね」とにっこり笑って、二人は夜道をかけていきました、なんだかおじさんには悪いけど、楽しい夜でした。
カワハラくんとわたしがいつもみたいにセックスして、気持ちよくて、でも憎くて、どうにかなりそうな気持ちになってると、ドアが開いて、突然知らない男がいっぱい入って来ました、警察の人でした、カワハラくんは、取り押さえられて、物凄い怖い顔でわめいていました、わたしは怖くて泣いていました、カワハラくんは、もう、カワハラくんは、終わったのだなと、冷静に思いました、さようなら、さようなら、いままでいっぱいありがとう、警察の人にぼこぼこに殴られるカワハラくんを見ていると、とても嬉しいです、同時にカワハラくんとのセックスを思い出すと、死にたいくらい切ないです、わたしは気が狂っています、こんな女はいないほうがいいのです、ただ、泣くしかできなかった、泣いて、カワハラくんをのせたパトカーを見てた、悪いのはカワハラくんだけではないのに、でも、カワハラくんには死んで欲しかった、自分でも自分が分かりません、これは愛なの?憎しみなの?
わたしは、何もなかったの様に、会社に就職し、親友の清美ともたまに飲みに行きます、カワハラくんの事は両親も、友達にも禁句となっています、多分、もう少ししたらお見合いして、結婚するでしょう、それはそれでもういいのです、カワハラくんと過ごした日々があるから、わたしは、わたしの存在はたったそれっぽっちのものです、風が吹くと飛ばされるものです、だからこの文も秘密にしておきます、もし何かあった時の為に、清美にだけコピーを渡しておきました、清美は約束通り、何か起こった時まで読まない事を実践してくれています、ありがとう清美、また飲もうね、ありがとうお父さん、お母さん、ありがとうカワハラくん、そして死んじまえ、ばーか、カワハラくん。
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