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NO.74

しゃぼん玉

平成14年 5月

     しゃぼん玉 (作詞 野口雨情  作曲 中山晋平)

 しゃぼん玉 とんだ  やねまで とんだ  やねまで とんで

 こわれて きえた

 しゃぼん玉 きえた  とばずに きえた  うまれて すぐに

 こわれて きえた   

 かぜ かぜ ふくな しゃぼん玉 とばそ

 かぜ かぜ ふくな しゃぼん玉 とばそ

野口雨情は、その他、“赤い靴”や“七つの子”の作詞もしています。

 この“しゃぼん玉”の詩は、大正11年に、仏教雑誌“金の塔”に最初に載ったそうです。雨情は明治41年に生後8日目の長女を失い、大正13年にも“恒子”という娘を亡くしています。今までは、雨情は自分の子(恒子)をテーマに“しゃぼん玉”を書いたといわれていましたが、どうも、発表された年月から、そうではなくて、“あの世に行っても楽しく遊べ・・・・”と、不平等に人生を謳歌できずに死んでいく、子供たちへのメッセージであったようです。そして、その頃は、第一次世界大戦後の恐慌、スペイン風邪、各地で起こる米騒動など、貧困の中の犠牲者は、いつも弱い立場の子どもであり、病で死ぬ子だけでなく、子供の数の多さに養いきれず涙をのんで親が自ら生児に手をかける、いわゆる間引きで死んで行った子どもの数も少なくなかったとあります。

 (「案外、知らずに歌っていた 童謡の謎」 合田道人著 祥伝社より)

 乳児死亡率というのがあります。1000人の赤ちゃんが、1歳までに死んでしまう数です。“しゃぼん玉”書かれた大正時代は150前後でした。生まれてくる赤ちゃんの10人に1人か2人は、きえていたのです。それが、現在では1000人に対して5以下となり、世界で一番の成績になっています。社会的に弱者である1歳まで子供の死亡率である乳児死亡率は、その地域の、生活環境の状況を表す一番の指標とされています。日本は世界の最高水準になっています。

 今年の日本小児科学会のテーマの1つに、「小児虐待」がありました。小児虐待のニュ−スが多く聞かれますが、実際には、隠れた虐待がもっとあると思います。生活環境は世界で一番の子ども達ですが、残念ですが、子どもへの虐待は増加しているようです。そして、日本では昔から、間引きの名前で、虐待があったのでしょうか。外国の小児科の教科書には何十年も前から「小児虐待」の項目がありましたが、日本では最近になって初めて、取り上げられるようになるなど、日本の小児科医の虐待に対する対応は遅れていたような気がします。学会では、虐待には児童相談所、小児科医、地域の住民、そして、警察の敏速な対応、協力が必要であるとの結論でありました。

5月5日は“子どもの日”です。育児に疲れたなと思ったら“しゃぼん玉”を歌って下さい。

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